ロングストローク化腰上調整

ランナー改造メニュー
 
クランク交換編
 
 
 
ロングストローククランクシャフト投入に合わせてシリンダをポート加工しようとして失敗、 ポリーニのシリンダを買い直して投入しました。
 
その失敗の顛末等をお楽しみください。
 

 
マロッシシリンダ他界 

このランナー最初のオーバーホールでロングストローククランクシャフトを投入することになりまして、 それまで使っていたマロッシシリンダをポート加工して、ストローク変更のポートタイミング調整とすることとしました。
 
ランナーに先立ってロングストローク化したGアクは、ストローク変更前の出力プロフィールを極力変えずにストローク(排気量)を上げてトルクを稼ぐ、 という前提を実現するのにシリンダのベースを削ったり排気ポートを上げたりと、 けっこうな加工が必要になりました。
なんで出力プロフィールを変えないためにポートプロフィールを変えることになるのかという理由に関しては下記ページの内容を参照してください。
グランドアクシス、ストローク変更腰上調整
 
ですから、ランナーも当然Gアクと同じくらいのポート加工が必要になるだろうとの思い込みから、 机上検討の前に手が先に動いて大雑把に排気ポートにリューターを当ててしまったんです。
 
メッキシリンダですから、慎重にリューターを当てないとメッキが剥離することがあるのは念頭に置いていたんですが、 こんなにデリケートだとは思いませんでした。
 
どんなだったかというと、リューターの回転を常にボアの外側に向けていたにもかかわらず、 ザーッと削ってしばらく放置して再度シリンダを手に取ってよく見ると、加工した部分のキワのメッキが浮き上がってるんです。

これは排気ポートをシリンダ下側から見上げた写真ですが、 ポート下端のメッキが一部モッコリと浮き上がってます。
 
 
うわぁ〜、ヤバイよ(汗)
自分的には慎重に削ったつもりなのに、こんな目で見て分かるようなモッコリができちゃったら使えないよ。
 
2stエンジンって、シリンダヘッドの燃焼室とか水冷系統なんかはかなりテキトーに作ってもそれなりに動くんですが、 ピストンリングの磨耗とかシリンダボアの変形(焼き付きとかによる)なんかは、 目で見て分からないような磨耗/変形量でもエンジンが動かなくなることがよくあります。
 
それなのに、肝心要のシリンダボアに目で見て分かるような変形ができた日には、このエンジン絶対動きませんよ。
運よくエンジンが始動できたとしても20kmくらいでメッキとピストンリングがカジって焼き付き、 最悪の場合ボアとピストンがロックした衝撃でクランクまで死亡....とかね。
 
で、この浮き上がりの部分を更にリューターで削り取ってみたんですが、 削り取った部分の周辺もポコポコ浮き上がってくるんです。
 
....やればやるほど墓穴が広がっていきます....
こんな時は一旦撤退して酒でも呑んで早く寝たほうが良いだろうと思い、作業を放棄しました。
 
そしてその夜、あらためてどのくらいのポート加工が必要なのか、 ランナーのエンジンの寸法を入れてあるCADデータを開いて、 ロングストローク化で必要になるポートタイミング変更量を出してみました。
 
そしたらですね、ランナーの場合、ストローク変更前と後で各ポートが開くクランク回転角を変えないように条件を設定すると、 排気ポートを0.5〜1mm上げるくらいで、Gアクで必要になったような大幅なポート加工は必要ないということが分かったのです。
 
Gアクとランナーのロングストローククランクシャフトはストローク増加量はほぼ同じなのですが、 ランナーのクランクはストロークが55.5mmに対してコンロッドが105mm、 Gアクはストロークが51mmに対してコンロッドが90mm、 (ストローク/コンロッド長)の数値で比較するとランナーが1.89でGアクは1.76、 この値が小さくなればなるほどロングストローク化によって必要になるポート加工量が大きくなるようです。
結局、コンロッドが長いランナーのエンジンはGアクに比べるとポート加工量が少なくて済むので、 激しい変化を望まないならばあえてポートを加工する必要はないようです。
 
あぁぁ....またあやってしまった....
最初に変更量の計算から入ってればポート加工には手を出さなかったかも.....ってことはないでしょうね。
タイミングの変更は必要ないとしても、これからマロッシチャンバーなんかも入れていく予定なので、 若干のポート上げと幅の拡大には手を出したでしょう。
そして今回のようにメッキを壊してから途方に暮れたことでしょう。
 
そっか、結局このマロシリンダはポート加工の実験台になる運命だったんですね。
 
さぁ、使えなくなっちゃったシリンダはとっととあきらめて、次のシリンダのGetに走り回りましょうか。
 
 

 
ポリーニシリンダ 

というワケでポリーニのシリンダ(左)です。
マロッシシリンダの新品も探したんですが、浜町のvespaに在庫がないとのことで、 ポリーニの在庫があった宇賀神商会のページでポチッと。
 
 
昔ランナーに乗ってたskipperさんという知り合いが「マロッシに比べるとパワーが無いんですが」って言ってました。
ポートのタイミングや幅なんかはマロッシとあまり変わらないんですが、 まず付属ヘッドの燃焼室容積が23.2ccと、マロッシの20.0ccに比べて低圧縮設定、 それと側面掃気に向かう混合気をワザワザ邪魔するかのような壁みたいなシリンダースリーブ....
なるほど、見た目からして速くなさそう、いわゆる“萌えません”
 
というワケで、このポリーニシリンダーもある程度加工してから投入します。
 
排気や掃気などボア側面のポートは手を着けません、さすがに懲りました。
そのかわり掃気へと向かう流路の拡大と、混合気の流れを妨げそうなシリンダスリーブの一部撤去を行います。
 
スリーブの加工もメッキ層に手を掛けることになるんですが、 ピストンリングでバリバリ叩かれる側面ポートと違い、 ピストンスカートで上から撫でられる程度の負荷しか受けないので、 側面ポート加工ほどの危険はないと思います。
 
それと今度は慎重に慎重を重ねてメッキ層に刃を入れるようにしましょう。
 
 

 
スリーブ一部撤去 

イキナリですが、こんな形状で撤去しようと思います。
 
 
 
この形状はRS125(年式不明)とNSR250のシリンダーで見たスリーブ形状。
今回手元に届いたポリーニシリンダをクランクケースに組み付けて、 リードバルブポートから掃気ポート下部の混合気溜め(?)の部分が全然見えないほどスリーブが邪魔になってました。
 
この邪魔板を無くすとともに、混合気を効率よく両側の掃気に振り分ける形状を....
と考えていたところ、以前見た上記のシリンダのスリーブ形状を思い出したんです。
RS125に関しては逆に真ん中が開いたスリーブ形状のシリンダもあるので、 どの形状が最適なのかどうかはわかりませんが、 自分のエンジンにシリンダを取り付けて眺めた限りでは、 真ん中を残して混合気を左右に分ける形状が良いかな、と思った次第です。
 
 
上の画像はメッキ層だけをすくい取るようにリューターでアタリを付けてあります。
これはマロッシシリンダの加工失敗を受けて考えてみた加工方法で、 まずメッキ層だけを慎重に切り取ってから撤去部分を大きな刃物でバリバリと落として、 最後にスリーブのフチの形状を慎重に整えよう、というコトなのです。
 
 

残す側のメッキ層に触れないように要らない部分を超硬のツクシンボでガリガリと除去。
 

大体の形ができたら....
 

メッキ層を捲らない向きから刃を当ててフチの形状を整えます。
 

 
給気口の加工 

今回使うシリンダーはこんな感じで掃気ポートへ通じる通路を拡大しようと思ってます。
クランクケースのほうはすでにこの形状に合わせて形状変更済みです。
(→クランクケース加工編
 

加工完了状態。
ここはメッキとは関係ない場所なので力任せに削るだけです。
 

 
ヘッドの調整 

これまでマロッシシリンダといっしょに使ってきたヘッドです。
 
シリンダのポートタイミングはほぼ変更の必要はありませんでしたが、 ストロークがアップするということはストロークアップした分だけピストンが飛び出すということであり、 このオーバーストロークはヘッドのほうで吸収することになります。

ちなみにS&Sクランクとポリーニシリンダの組み合わせだと、 このくらいピストンが飛び出します。
 

削りあがったヘッド。
オーバーストローク分を除いた容量で20.0ccになります。
 
 
 
今回ヘッドブロックを新規に作り直すかどうか迷いました。
ストロークアップに伴って燃焼室全体を上に(クランク軸と反対の方向に)押し上げなければならいのですが、 既存のヘッドブロックを追加加工する場合、プラグ位置がすでに決まってしまっているので、 燃焼室容量を確保するためには燃焼室形状を横に広げる必要があります。
 
しかし、これまで使ってきた燃焼室形状、そこから引き出される走行性能が気に入ってたんです。
走行性能は燃焼室形状だけで決まるワケじゃありませんが、 クランクやシリンダ以外のところは極力変化を抑えたいところです。
 
燃焼室形状を変えないで燃焼室全体を上に押し上げるとプラグもいっしょに上に上がります。
プラグの締め付け面を押し上げることは物理的に不可能なので、 ここで作り直すかどうか迷ったということなのです。
 
同時期にヘッドを作り直したGアクでは、プラグ位置を上げるためにスペーサーを噛ませる、という方法をとりました。
(参考→グランドアクシス、HIDヘッド、Ver.2.1
これは別にGアク用に特別に考えた方法ではなくて、ランナーとGアクのエンジン改造を同時並行で考えている途上で 「ランナーもGアクも同じ方法で燃焼室調整ができるかも」と思い立った方法だったのです。
 
なのでランナーも同じようにプラグ座面にスペーサーを仕込んでプラグを全体的に2mm上に上げます。

スペーサーを仕込むのはイイとして、単なる円盤を入れるだけでは面白くないかも....
ということで考えたのがコレ。
スペーサーから上に伸ばしたフランジに接地線取付ポイントを作ってみました。
 
 
 
プラグで発生したスパークは、ヘッドブロックからシリンダスタッドを通ってクランクケースに流れ、 そこからボディアースに落ちて行く行くはバッテリーのマイナス端子へと行き着くのですが、 プラグの座面から直接ボディやマイナス端子に配線してやれば点火効率が高まるんじゃね?....
 
といっても、そういう直接配線がない普通のエンジンが普通に動いてるということは、 ヘッドやシリンダスタッド間の電気抵抗は本来大きな影響は無く、 ヘッドブロックが持ってる静電容量だけでスパークの電気量を受け止めていると解釈できるワケで、 直接配線を施したからといって即「強力なスパーク」ということにはならないと思うのですが、 「萌え方向の施策は積極的に導入!」という基本姿勢は今回も貫くぜ。
 
効果に関しては検証のしようもありませんが。
 

 
その他のポイント 

シリンダヘッド燃焼室のセンターとシリンダボアのセンターが容易に合うよう、 ノックピンを打ちました。
ロングストローク化によって、ピストンヘッドが燃焼室の中に飛び込む構成になっているので、 組立時にシリンダとヘッドがズレてピストンがクラッシュしないように、との措置です。
 

シリンダベースガスケットの穴が合いません。
このガスケットはシリンダキットに付属してきたものです。
どうもFXR(180)用のガスケットが同梱されていたみたいです。
 
まぁ、ラテン製品なんてこんなもんですよ。
 

マロッシシリンダのガスケットの手持ちがあったのでそっちを使いました。
 

腰下調整の項でチョロッと触れた、ピストンとクランクウェブの干渉回避措置。
ピストンスカートのカドをヤスリで落として組みました。
 

 
走行感 

ストロ−クもボアも上がっているのでトルクの増大は強く感じることができます。
 
スロットル微開領域でコロコロと良く走るので燃費も上々、 普段の足として街乗りをするには良いエンジンだと思います。
 
でも、ポート加工をサボったことによる高回転のスポイルも顕著で、 120km/hくらいでフケ切るというか、変速レシオが足りなくてエンジンがゴンゴン唸っている感じです。
 
元々このエンジンは125ccのもので、ファイナルギアがローギアードなのですが、 排気量が187.5ccにもなってトルクが過剰気味なのに変速領域が125のままってのもバランスが取れてないのかもしれません。
 
ハイギアを組む気はありませんが、180のノーマルギアは組んでみたいですね。
ベルトを180用にすると変速域が若干上方シフトするので、それは機会をみつけて試してみようと思います。
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