シリンダーヘッド

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(センタープラグ化ヘッドカバー)
 
 
 
 
シリンダーヘッドの燃焼室形状や容量を変更するため、 ランナー純正の偏芯ヘッドをセンタープラグ化します。 前段階としてヘッドカバーのプラグ貫通穴をシリンダボアと同芯とする加工を施しました。 (→参照はこちら) いよいよ肝心のセンタープラグシリンダヘッドの製作にかかります。
 
 
 

カセット式燃焼室

燃焼室は容積や形状を変更して色々な仕様を作ってみたいので、 カセット式の燃焼室をクランプで押さえてシリンダに固定する方式としました。
 
 

燃焼室形状

H.I.D.ではヤマハスクーターの波形燃焼室を高回転仕様にテーパー燃焼室化加工してます。
 
これはこれで何年式かのTZの燃焼室に似ているそうで、使える形状の一つだと思いますが、 最近のNSRやTZR、CRM、TS、など現役(カタログ落ちしてますけど)の2st車両のヘッドは大概、 “半球形”の燃焼室とそれを取り巻くスキッシュエリアで構成されています。
また、 やまっち師匠 のオリジナルヘッドもやはりそんな感じの形状なんだとか。
 
H.I.D.の機材では半球形形状の加工と容量計算ができませんし、 手加工で半球形を作ったとしても図面段階で容量管理ができないと加工段階で容量調整のドツボにハマるので、 図面上での容量計算が可能なテーパー形状の組合せで半球形に一歩近づけた、 二重テーパー燃焼室(Double Tapered Combustion Chamber)形状を考案してみました。
 
この形状では半球形にはない要素として、 プラグ点火部を取り巻く第1テーパーがスパークによってできた初期火焔を、 燃焼室中心に向けて“反射”する機能を期待しています。
 
もっとも、半球形ではなくて燃焼室中心を焦点の一つとした楕円に似た自由断面とすれば、 プラグスパークを全て燃焼室中心に反射することができるはずですが、 そんな形状ウチでは絶対作れません。
 
 

燃焼室容積

FX純正やマロッシヘッドの容量を基に、“ポートタイミングをあまり変えずにチャンバーで街乗りしやすい容量” を考えてみました。
 
マロッシのボアアップキットの取説には
「オクタン価95の無鉛ガソリン(つまりハイオク)、 “V-パワー”(知りません)またはそれ相当のガソリンを入れろ(命令口調)」
と記述してあります。
取説のこの部分は50ccからランナーまで共通の内容なので、 単に保険としてハイオクを入れれ、と言ってるだけかもしれませんが、 レギュラーガソリンでも圧縮圧1.1MPaくらいまでは普通に走るので、 “ハイオク指定”ということは極端に高圧縮なのかもしれません。
チャンバータイプのマフラーを使う場合、1.0MPaくらいまでは圧縮を上げたなりに加速にパンチが出たりするんですが、 それ以上圧縮を上げても高回転の伸びが落ちるだけで、オイシイところが少なかった印象があります。
SSマシンみたいに公道で普通に走らない仕様では話しのレベルが1段違うようなんですが、 チャンバータイプのマフラーを使って街乗りするならマロッシヘッドより圧縮を落としたほうが良いのでは?
と、思ったのです。
・・・・追記
2005/3にマロッシのキットより若干圧縮が高くなるヘッドブロックを製作して投入しましたが、 燃焼室圧力冷間測定の結果は1.0MPaでした。
1.3MPaを超えると不正爆発などが出始めたので(空冷エンジンの場合ですが) 1.0MPa前後の圧縮値になるマロッシヘッドは特に高圧縮というわけではありません。 実使用上はレギュラーガソリンでも問題はないでしょう。
 
じゃ、何ccにしましょうか?
目標にしたのはわたしが乗っているグランドアクシス(以下、Gアク)がショットガンチャンバーで一番調子よく走っていた頃の仕様。
排気量101cc、燃焼室容積12.0cc+ガスケット内径容積1.1cc
 

そして、ランナー用ヘッドの容積、
PM-TuningはRyoさんから、 FX-R純正とKBはJOHさんから貸してもらいました。
ありがとうございます。
燃焼室容積
FX16.7cc
FX-R23.3cc
Malossi20.0cc
PM-Tuning17.3cc
KB16.4cc
polini23.2cc
 
 
各燃焼室容積を排気量との比で比較してみました。 圧縮比で比較したいところですが、ピストンクラウンの体積処理が難しいので。
 
燃焼室容積ボア、ストローク、排気量排気量:燃焼室容積
FXSP16.7cc55,52,123.5cc7.4:1
Malossi20.0cc65,52,172.5cc8.6:1
G-Axis13.1cc52,47.6,101.1cc7.7:1
FXSP-K22.4cc65,52,172.5cc7.7:1
 
もうひとつ、排気ポートから上の圧縮比を考えてみます。 これもピストンクラウンの処理を省略した簡易計算なので参考程度と考えてください。
 
燃焼室容積ボア圧縮ストローク圧縮比
FXSP16.7cc5534.14.9:1
Malossi20.0cc6530.35.0:1
G-Axis13.1cc5228.74.7:1
FXSP-K21.5cc6530.34.7:1
 
これから作るヘッドを“FXSP-K”とします。
上段の表で比をGアクと同じ7.7:1にして燃焼室容積を逆算すると22.4cc、 同様に下段の表で逆算すると21.5ccになります。
 
どっちを重視するか迷うこともなく間を取って22.0ccにすることにしました。
約1割の容量ダウンとなると、101ccエンジンのヘッドで考えると0.5mmのガスケットを1枚余分に入れたくらい。 取り敢えず一発目としては十分余裕のある設定だと思います。
 
こうやって細かい仕様を自分で考えて決めていくのって、 「○○製のヘッドをポン付け」とかより楽しいと思うんですがどうでしょう?
 
 

ヘッドクランプ

マロッシのボアアップキット付属のシリンダヘッドの中身をくり抜いて、 燃焼室部を固定するクランプを製作。

○上面
左:加工前
右:加工後

○下面
左:加工前
右:加工後
 
 

燃焼室ブロック

φ80のA5056材からの削り出し。
この形状で22.0ccです。
容量の変更などはこのパーツだけ作り直すことになります。 この構造は今後試作予定の空冷エンジン用水冷ヘッドにも適用する予定です。
 
 

オーリング取付部

ヘッドクランプ内側とヘッドブロック下面の形状の組合せで オーリングの溝を形成する構造としました。
 
 

仮組み状態

この構成のシリンダヘッドの利点として、 プラグのアースフックを任意の方向に向けて組みたてることが可能です。
 
 

ヘッドの組み立て

プラグのアースフック開き位置にマーキングしておいて....

一旦普通にトルクを掛けて組み立てた時点ではマーキングはあさっての方向を向くので....

スタッドナットを緩めてヘッドを回転させてマーキングを好きな位置に向けて 再度スタッドナットにトルクを掛ける、と。
 
確か「排気側に開かせる」だったと思います。
 
 

大容量接地端子

このヘッドを考える途上で考案したアーシング端子構成。
 
一般的な国産車の水冷ヘッドだと燃焼室とウォータージャケット外殻が一体鋳造なので、 ヘッドスタッドにアース端子を共締めすれば良いんですが、 ランナーエンジンの場合、FXはヘッドカバーが樹脂だし、 FXRはアルミカバーでもプラグ周りのオーリングとヘッドカバーベースパッキンがあるので カバーは電気的に浮いた状態になっていて、アース端子取付場所としては不適です。
 
FXSP-Kではせっかくオリジナル形状のヘッドを新造するので、最も理想的なプラグ根元にアースを取るようにしました。
 
ヘッドのプラグ周りのスリーブを延長してクランプ状の端子を取付けることにしました。
 
 

完成

ここまでできればタイヤをはめてエンジンを車体に取り付けることができます。
エンジンと車体が合体するとクリアランスが見えてくるのでマニホの製作と キャブの改造に掛かれます。
 
接地端子はこの後形状変更してます。
 
ヘッドは何パターンか作ることになると思いますが、 交換要素が最小限なので作り直しも楽といえば楽です。
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